ライアスの低く澄んだ声が、美奈の心に響いた。


「迷わずミーナとして生きろ。そして、背負った己の使命に従順に、うまい飯を作って俺に食わせろ。唐揚げお代わり」


「三皿目!? どんだけ食うんだよ」と指摘して笑ったのはマッキオで、エルネとジャンポールは呆れ顔をしている。

けれども、空の皿を差し出したライアスの口の端にマヨネーズがついているのに気づくと、ふたりとも吹き出して笑った。


「はい、お代わりですね」


皿を受け取った美奈は、ライアスと他の三人の顔を順に見て頷き、それからパッと花が咲くように微笑む。


「私ミーナが、お代わりの唐揚げを作ってきます。竜騎士団の皆さん、ありがとうございます。今日は唐揚げしか作れませんが、これからどんどん美味しいメニューを増やしていきますね」


美奈……いや、ミーナとして生きていくことを決意した彼女は、希望を胸に溢れさせる。


(私の料理で、この世界のお客さんたちを笑顔にする。それが私の使命なんだ……!)


ミーナはテーブルから離れて、厨房へと引き返す。

生き生きとした大きな琥珀色の瞳が、レストラン・ルーブルを映し、頭の中には早速、これから作りたい料理の数々を思い浮かべていた。