ようこそ異世界レストランへ~食材召喚スキルで竜騎士とモフモフ手懐けます~

「入りなさい」という威厳のありそうな声が室内から聞こえ、ミーナの中に再び緊張が戻る。

ドアが開けられ中に通されると、長方形のテーブルを、二脚の長椅子とひとり掛けのソファひとつが囲んでいた。

レース越しの柔らかな陽光を浴びて伯爵がソファから立ち上がり、両手を広げて一家を迎えてくれた。


「よく来たな。さあ、座りたまえ。今日は相談があって呼んだんだ」


その明るい口調と笑顔からは、歓迎している様子が窺える。

ミーナとアマンダはホッと息をついたが、それまでは楽観的であったジモンが、「相談でございますか?」と懐疑的に顔を曇らせた。

もしや、レストラン・ルーブルが大繁盛しているから、上納金額を上げるという話ではないかと、ジモンは危ぶんだのかもしれない。


ふたり掛けの布張りの長椅子に夫妻と兄妹で並んで腰掛け、伯爵もひとり掛けのソファに座り直す。

目の前には紅茶とクッキーが、メイドの手によって出された。

街には菓子屋がないので、デザートやスイーツの食文化がないとばかり思っていたミーナは、上品な皿にのせられた三枚のクッキーに興味津々だ。

伯爵が相談とやらを話し出す前なのに、早速パクッと口にしてしまい、「はしたないわよ」とアマンダに注意される。

それに対して謝るのではなく、ミーナは眉を寄せた。


(これは私の知ってるクッキーじゃない。やけに硬くてサクサク感がないし、少しもコクがないからバターも卵も使っていないんじゃないかな。ただ小麦粉を水で練って、砂糖を加えて焼き上げたみたい)