(調子に乗っちゃった。すっかり本当の兄妹気分でいたけど、ザックはまだ私に慣れていないのかも……)


執事の案内で、一家は長い廊下を奥へと進んでいる。

ミーナがうつむいて黙々と歩いていたら、隣でザックの舌打ちが聞こえた。


「別に嫌だと思ってねーよ」と照れくさそうにボソリと呟く声がして、「仕方ねーな」とザックの右手がミーナの左手をそっと握った。


「お兄ちゃん、ありがとう」


手を繋ぐという行為が恥ずかしかっただけなのだと知って、ミーナは安堵した。

そして隣にニッコリと笑顔を向ければ、ザックの顔がたちまち耳まで赤く染まる。


「そ、その顔やめろ。俺を惑わすな。俺たちは兄妹だろ」

「うん、兄妹だよ。惑わすってなにを?」

「馬鹿、なんでもねーよ!」


ザックの大きな声が廊下に響き、振り向いたジモンに、「お前たちなにをはしゃいでいるんだ。うるさいぞ」と叱られた。

それと同時に先導する執事が足を止め、「こちらでございます」と目の前のドアを手のひらで指し示す。

ドアをノックした執事は、やや声を大きくしてドアの内側に話しかけた。


「旦那様、コレット家の皆様がお見えになりました」