そんな三人の様子を向かい側から見ているのは、ケイシーの妹だ。

七歳の少女は、いなり寿司を食べながら、隣の席の姉に話しかける。


「私、知ってるよ。ああいうのをチジョウノモツレって言うんだよね」


するとケイシーが少し考えてから、真面目な顔で妹に指摘する。


「そこまではいってないんじゃないかな。たぶん、ただの三角関係だよ」

「三角形?」

「三角関係。ミーナお姉ちゃんの気持ちはどうなんだろうね」

「聞いてみようよ。ねぇねぇ、ミーナお姉ちゃんはどっちのお兄ちゃんが好きなの?」


その無邪気で遠慮のない問いかけは、石のように固まってしまったミーナの耳には入らないが、母親が慌てて娘たちを叱る。


「そういうこと聞いちゃ駄目よ!」

「どうして?」

「どうしてって、それは……」


説明に困った様子の母親が視線を彷徨わせると、テーブル上でクルミをコリコリ食べているジャンポールと目が合った。

「ふたりとも、そんなことよりハムスターと遊んだら? 喋るハムスターなんて珍しいわ」と言ったのは、娘たちをの興味を逸らそうと思ってのことだろう。

けれどもその言い方からすると、竜騎士団所属の大魔導師だとは気づいておらず、ライアスのペットだと思っていそうな気がする。