「今日は何百個もおにぎりを作り続けてお疲れでしょう。ゆっくり召し上がってください。私なら平気です。いつもレストランの厨房で、立ちっぱなしですから……キャッ!」


ミーナが驚きの声をあげたのは、ライアスに抱えられ、膝の上に横向きに座らされたからである。

「これで全員、座って食えるだろ」という淡白な声がすぐ耳元で聞こえ、ミーナは口から心臓が飛び出しそうな心持ちでいた。


(ど、どうしよう。近すぎて緊張しちゃう。このまま食べるなんて無理だよ……)


ライアスの右隣にはマッキオが座っていて、焦りを顔に浮かべて「ずるい!」と非難した。


「ライアス、その役代わって。俺っちもミーナちゃんを膝にのせたい」

「嫌だ」

「なんで!? やっぱお前も惚れてんの? 硬派な堅物男の称号を捨てる気なのか?」


マッキオがミーナを力尽くで奪おうと手を伸ばすが、そうはさせまいとライアスは彼女を両腕で強く抱きしめる。

恋愛未経験者のミーナは思考力が完全に停止しており、真っ赤な顔で瞬きもできずに、されるがままになっていた。