「…………、」

「あきら、その…」

「ヒデくん…好きな人、出来た?」

「え…?」

「…出来たんだ?」

「なんで…」

「分かるよ、それくらい」


小さく溜息を吐く。
上手くやれるなんて思ってるのなら、貴方は残酷でとても読みが甘い…。

勿論、ここ最近の私達のすれ違いは、互いに自由主義な所から、関係が綻んでも仕方なかったかもしれない。


けれど、だからって…。
この仕打ちは、どうなんだろうか…。


「あの、さ…」

「いいよ、もう」

「だから、落ち着けって」

「十分に落ち着いてる」

「暁良…」


彼が私の名前と共に出した大きな溜息が、この胸をぎゅうっと締め付けた。

でも、意固地になっている私は後に引けない。


「何?私に泣けって?問いただせって?どうして、そういうのを求める、かなぁ…っ」

くしゃり

髪を掴んで顔を歪ませる。
こんな時に、二人肌を見せ合っていることが物悲しい。

「あ、」

「知ってるでしょ?私のこと。だからさ、それでも良いって言ったんだよね?」

混乱し切っている私は自分でも、訳のわからないことを口にしていく。

駄目だ。
これ以上、言っては。

そう思うのに、言葉は止まない。


「ヒデくんは、狡い。こうやって私のことを抱けば、私が何でも言うこと聞くなんて…そんな風に思ってる?」

「そんなことない!」


声を荒げてから、またハッとする彼。
それが苦痛に滲むから、余計に傷付く。


「とりあえず、帰る」

「…じゃあ、送るよ」

「いい。いらない。こんな状態でこれ以上二人なんて堪えられない」

私は歯を食いしばって、彼を睨みつけてから、そういうと部屋から出た。



二度とは彼を信じられないだろうと確信して……。