そんなある日。
彼の部屋で、久しぶりに二人きりでまったりと時間を共有していた時。
なんとなく、聞いてみた。
というか、口を付いて出た言葉。



「…愛してる?」

「んー、そうね」


本当に久しぶりに言った台詞に、彼は雑誌をパラパラと捲って素っ気なく返事をする。
私はそれに対して意固地になって、もう一度聞く。


「ねぇ、愛してるって言ってよ?」


いつもならば、そんなことをしない私。
でも、その時はどうしても止めることが出来なかった。

それに向かって、彼は無表情のまま呟く。



「………飾りだけならいくらでも」

「…………なに…それ」


自分でも、言った後にハッとしたのか、私の顔を覗き込もうとする、彼。

私は後退って、彼から離れる。


「暁良、その…」

「もう、いい。帰る」

「ちょ、待って。落ち着いて。…話、聞いて」

「ヒデくん…酷いよ…今のは。冗談にしても笑えない」


自分だって、落ち度はあるのに…全てを彼のせいにしようとしている自分が嫌で、私は自身を抱き締めた。

「暁良…」

「かえ、るってば……んんっ」

容赦のない抱擁と、マグマのように熱い接吻け。
チリチリと焦げる胸の内を彼は知らない。


そして、半ば押し切られるようにして重なった肌。
愛しさの倍、悲しみが心を覆って…生理的な涙が伝う。

「暁良…」

「やめて…名前呼ばないで…」

「暁良…暁良…」

何時からこんなに臆病になったの?

貴方に出逢う前の私は…一人で何でもこなせてたはずなのに。

完全に、音を立てて…壊れていく…二人の関係。


微かに感じた私の知らない香りと…私の知らない指使い。


そこで、全てが分かった気がした。

彼の後側に見える、私以外の誰かを…。