「今日も綺麗ね」
沈む夕日は街さえも赤く染めては、その身を燃やす。
そんな光景を見つめながら、ルーカの手をきゅっと握った。
「どうかした?」
「ううん。なんでもない」
なんでないわけないけど、そっと気持ちを誤魔化すように小さく笑った。
この夕日が沈むまで。
それが私達が一緒にいれる唯一の時間。
短すぎるけれど、この時間しか私達は人の目を盗んで行動ができない。
私はこの国の王の娘……つまり、姫という立場。
そんな立場でお城を抜け出して会いたい人物は、亜人であるルーカ。
様々な人種が暮らす国ではあるけれど、時折差別という問題は消えてなくならない。