【短】キミのためにここにいる

今、ちゃんと言葉になってた?
声、震えてなかった?


どくんどくん


激しい胸の鼓動。

この音がどうか、千都に聞こえませんように。
私はそれだけを願って足を動かそうとする。


けれど、それは叶わなかった。

何故なら、千都に後ろから抱き締められてしまったから。


「…な、によ…?」

「渡さない」

「…え…?」

ぎゅうっと力強く抱き締められて身動きが取れず、私からは千都の顔が見られない。
戸惑う私に、千都はもう一度だけ「渡さないから」と言って私を解放した。