先輩なんて呼ばせない



「お、面白いものなんてなにもないよっ」


見ていた先がバレないように、窓を体で隠すように立ち上がった。


墓穴を掘るまい……と挙動不審な私に、藤崎くんは唐突なことを言ってきた。


「そういえば葵ちゃん、メイク変えた?」


「メイク?」


話題が変わったことにホッとしつつ、なんのことだろう……と首をかしげて。


あっ、とすぐにピンときて、私は唇を指した。


「リップなら変えたよ」


今までは春色のリップをつけていたけど、だんだん夏に近づいて来たから、最近オレンジ系のリップを買ったんだ。


実は……陵ちゃんに褒められたの。


これをつけたらすぐ気づいてくれて、『葵、その色いいじゃん』って。


もうそのときの私、天にも昇る気持ちだったなぁ……って、藤崎くんも気づいてく れちゃって……。


どうしよう、照れる。