先輩なんて呼ばせない



「綾瀬先輩って呼ばれたとき、すげえショックだった」


いつも器用で余裕たっぷりの陵ちゃんが、余裕なさそうに眉根を下げる。


「葵との距離を感じて、へこんでたのは俺だよ」


そんな……。


「葵は勝手に俺のもんだって思ってた」


自嘲するようにふっと笑う陵ちゃんからこぼれる白い歯。


「でも他の男と仲良くしてんの見て、かっこ悪ぃけど嫉妬してる俺がいて。……気づいたんだ……俺は、女の子として葵が好きだ」


「う、うそっ……」


いま、陵ちゃんに好きって言われた……?  


これは……夢?


「先輩なんて呼ばせねえよ」


そして、夢見心地の私をギュッと抱きしめた。


「もう幼なじみなんかじゃいられない。俺の彼女になって」


「……っ」


少し痛いくらいの温もりと香りが、現実だと教えてくれる。