先輩なんて呼ばせない



「葵」


静かに、でも熱を持って呼ばれた名前に胸がトクンと音を立てる。


「……な、なに……?」


すると陵ちゃんは掴んだままの腕をグイっと引き寄せ、私の後頭部に優しく手を添えた。


そして私たちの額と額が合わさる。


「……!」


陵ちゃんからいつも漂うレモンの香りが、今日はとても甘く鼻をかすめた。


こんなに接近して……ドキドキが止まらないよ。


思わずぎゅっと目をつむると。


「これでも、俺と葵の間に距離があるって思う?」


ドキッ。


「今の俺と葵の間に、距離なんて一ミリもないよ?」


……陵ちゃん?


なにが言いたいの?


この間、陵ちゃんが遠いって言ったこと……?


ゆっくり目を開けると、今は陵ちゃんが近すぎて心臓止まりそう。