先輩なんて呼ばせない



すると、彼女の視線が先に私に移り、次に陵ちゃんが振り返った。


陵ちゃんの目は……見ることができない。


今、どんな顔してるのかな。


「あの、これ、美化委員のファイルです。遅くなってすみませんでしたっ……」


少しうつむき加減に用件だけを告げると、ファイルを陵ちゃんの胸に押し付けるようにして踵を返す。


陵ちゃんからの返答は、なにも聞かずに。


とにかく一刻も早くこの場から去りたかったんだ。


「先輩……か」


はじめて口にした不本意な言葉も、現実問題、間違ってない。


陵ちゃんは先輩。私は後輩。


どこまで行っても、私と陵ちゃんの差なんて縮まらないの。


キレイなあの先輩みたいに、肩を並べて堂々と会話することもできないんだ。


現実を突きつけられたような気がして、涙がじわっとあふれた。