先輩なんて呼ばせない



「え……」


思わず漏れる声。


傘を持っているのは、陵ちゃんより頭ひとつ分背の低い髪の長い女の人で、陵ちゃんに向けてフワッと優しく笑ったのが見えた。


横顔だけで、ものすごく美人と分かる雰囲気を持っている。


そして今度はその傘を陵ちゃんが持ち……ひとつの傘に入ったふたりは肩を並べて 昇降口を出て行った。


ドクンッ、ドクンッ……。


静かに音を奏で始めた鼓動は、次第に大きく、そして速くなっていく。


あの人は、誰……?


胸をわしづかみされるような感覚。


痛くて痛くてたまらない。


だんだん小さくなっていくそのふたつの背中。


目をそらしたくでもできなくて、足だって磁石のように張り付いたまま動かない。


もしかして、彼女……?


うそでしょ。


陵ちゃん……彼女、いたの……?