先輩なんて呼ばせない



まだできます!

そう言って腕をぐるぐる回してみるけれど。


「無理すると、また綾瀬先輩に怒られちゃうし」


「そ、それはっ……」


ここで陵ちゃんの名前が出てくるとは思わず、ちょっと動揺してしまう。


そんな私を見て、天音くんは笑う。


「ははっ。てか俺も無理させたくないし、今日は終わろう」


「う、うん。つき合ってくれてありがとう」


体育館の外へ出ると、雨はさっきよりも激しさを増していた。


グラウンドのあちこちに水たまりもできている。


帰り、足元びちょびちょになっちゃうよ、やだなぁ。


なんて思いながら昇降口の前を通過したとき。


……あれ、陵ちゃん……?  


今まさに昇降口を出ようとする陵ちゃんのうしろ姿が目に入った。


こんな偶然に会えるなんて嬉しい!


胸の中が高揚感でいっぱいになった次の瞬間、顔がかたまった。


陵ちゃんが小走りして、女の人の持つ水玉の傘の中に入っていったのだ。