「突き指……。ああ、良かった……」
息が切れていて、慌てて飛んできたのが見て分かる。
「っていうか、どうして……?」
「亜子ちゃんから、葵がケガしたって聞いてびっくりして」
「亜子が?」
「さっきまでいた葵の姿が見えなくなったから、気になって聞いたんだよ」
「……っ、ごめんね、心配かけちゃって」
陵ちゃん、私がいたこと知ってたんだ。
あんなに人がいる体育館で私を認識してくれていたと思うと、それだけで口元がだらしなく緩んでしまう。
「先生、ほんとにこれ軽い突き指なの? 病院行かなくて平気?」
「大丈夫よー。このくらい部活で慣れてる子なら放置する程度のものだし。桜木さんはそうじゃないから、念のため無理しないようにねってことで」
「まじか。よかったー」
大きく肩をなでおろす陵ちゃんに、保健の先生はクスクス笑う。