先輩なんて呼ばせない



うー。

陵ちゃんのイジワル。


それ、否定してもうそに聞こえないよ。


「じゃあ、行かなきゃ。陵ちゃんまたね」


もたもたしてたら山本くんに怒られちゃう。


手を振って駆け出した私に。


「葵!」


もう一度呼ばれて振り返ると。


「昨日はありがとな」


極上のキラキラな笑顔が向けられた。


ドキッ。


やっぱりお弁当を届けて良かった。


「うんっ!」


私はボールを胸に抱え、目一杯の笑顔で応えた。



「まったくもー、しっかりしてよ。しかも戻ってくるの遅いし」


みんなの元へ戻ると、案の定、山本くんに怒られた。


「ご、ごめん……」


「葵ちゃん、手のひらは広げるんじゃなくて、優しく指をカーブさせてボールを包むように扱うといいよ。手のひらに磁石がついてると思って、吸い付かせるようにドリブルしてごらん」


分かりやすく落ち込む私に、天音くんが実践して見せてくれた。