先輩なんて呼ばせない



咄嗟に体をよけると、やってきた自転車は私の横を通り過ぎると同時に速度を緩めた。


なんだろう……と思ったその瞬間。


横から腕が伸びてきて、頭をクシャクシャと撫でられた。


「……っ!?」


「急がないと遅刻するぞ」


驚く私に一言放ち、また勢いよくペダルをこいで通りすぎていく。


微かに、レモンの爽やかな香りを残して。


ポニーテールの後れ毛が目の前に落ちて狭まる視界。


そこからのぞくのは、確かにあの人のうしろ姿。


「……陵ちゃん……?」


びっくりして思わず足を止めた。


彼の名前は綾瀬陵介(アヤセリョウスケ)。


隣の家に住む、ひとつ年上の男の子。


年上といっても、私と陵ちゃんの誕生日は実際七日しか違わないんだ。