「ところで、一時間目古文の暗唱テストあるけど大丈夫?」
「そんなのあったっけ!」
「そんなことだろうと思った。葵は相変わらずなんだから」
焦る私とは対照的に、亜子は笑いながら空に向かって余裕そうに暗唱しはじめた。
しっかり勉強して、テストはバッチリみたい。昨日の夜、マンガを読みながら寝落ちしちゃった私とは大違いだ。
古文は大の苦手。
ありけり……とか、普段使わないような言葉ばっかりだもん。
「古文なんて必要かな、平成ですらもう終わって令和の時代が来たんだよ?」
「そういう問題?」
「そうだよ。それより新語の勉強した方が役立つのに」
テストのことはすっかり諦めて歩いていると、同じ制服を着た生徒たちが増えてくる。
学校まではもうすぐだ。
チリンチリン。
うしろから、自転車のベルが鳴った。