「ツ、ツッキーは、な、なんて返事をするつもりなの?」
「どもってんじゃないわよ」
「い、痛っ」
デコピンされた。
額を両手で押さえながら恨めしげにツッキーを見上げる。
「そうねぇ。どうしようかしらねぇ」
顎に手を当て考える素振りを見せるツッキー。
ツッキーは、元々恋愛に対して淡白なんだけど、あの美丈夫な総長相手でも、それは変わらないのかな。
「総長は良い人だよ?」
援護射撃をしてみたくなった。
「十分分かってるわよ。それに、話も合うし考え方も同じだもの」
「だったら···」
「だからこそ、しっかり考えてるのよ。彼、来年の初めに渡米して5年は向こうだっていうし」
そっか、そう言えば総長は、アメリカに留学するって言ってたもんね。 
付き合っても直ぐに遠距離恋愛になっちゃうんだ。
ツッキーが、慎重になってる理由はそこなんだ。

「そっか。遠距離になっちゃうなんて辛いもんね」
「追いかけて行く覚悟がまだ出来ないだけよ」
「ええーっ! 追いかけて行く?」
驚きに目を見開いた。
ツッキーは、そんな事まで考えてたの?
「当たり前じゃない。待ってるなんて私の性に合わないわよ」
当然でしょって笑うツッキーの強さに感動しちゃった。
「ツッキーは凄いよ」
追いかけて行く事を考えるなんて。
「そりゃ、私だって直ぐには無理だけどね。高校の卒業と同時にならアメリカ留学も悪くは無いと思うのよ」
そう言ったツッキーは、目の前じゃなく、その先の未来を見据えてた。
ツッキーは、今までと同じ恋愛をするのかなって思ってたけど、それは私の間違いだ。
彼女は、総長との未来もしっかりと考えてる。

「ツッキー、凄く考えてたんだね」
「当たり前でしょう、考えるわよ。だから、今までみたいに軽い返事は出来ないのよ」
「···ツッキー」
「神楽が辛そうな顔してるんじゃないわよ」
「だって···」
「樹弥と付き合うなら、きっと最後の恋になると思うのよね。そうなったら、神楽と離れる事になるじゃない? それって寂しいのよね」
そう言って静かに笑ったツッキーは、運命と取り組むような真剣な瞳をしていた。
ツッキーの思いの深さを知ったような気がした。
彼女が総長を選ぶ時、私達は離れ離れになっちゃうんだね。
ツッキーの言葉で気付かされたよ。
ずっと一緒だったツッキーが遠くに行っちゃうのは、私も寂しいよ。
でも···ツッキーにも、総長にも幸せになってもらいたいって思う。
「···ツッキー、私···」
「私が神楽と離れたくないって思ってるだけなんだから、神楽は気にしなくていいのよ」
「でも、足枷になってるのは辛いよ」
「バカね。足枷なんかじゃないわよ。神楽は私の大切な親友なのよ」
ツッキーの言葉に涙が崩壊した。
私はこんなにも思われてたんだね。
今まで、沢山励まし、助けてくれたツッキー。
私も貴方が唯一の親友だって思ってるよ。