父親は読んでいた新聞を几帳面にたたむと、
「最近、体調はどうだ?」
と聞いてきた。

「あれからは……大丈夫だと思う」

「記憶が抜けることもないのね?」

お茶の入った湯呑を差し出しながら聞く母親にもうなずく。
去年の春から夏にかけては、ずっと体調がおかしかった。
やたら体が疲れていたし、どこも出かけていないのに足がパンパンになっていたことも。
記憶がすっぽりと抜け落ちることまであり、いくつかの病院にも行った。
そのたびに少しずつ俺は両親のやさしさに素直になった気がする。

「最後はたしか、屋上の扉の前で立ってたんだよ。あれが最後かな」

あれからもう半年が経った。


今は必死で受験勉強をしている最中だ。