だが、それに反応する気力もなかった。
夏希はつまらなそうに俺の顔を見つめる。


「ひなたと何かあった?」


さすがと言うべきか、俺が分かりやすいと言うべきか。
俺は視線を落とす。


「あのねえ。いくら双子でもすべてがわかるわけじゃないんだから、説明くらいしてよ」


夏希は俺の部屋に入り、ベッドの上にあったクッションを抱え、勉強机のそばにある椅子に座った。
俺はドアを閉め、床に座る。


「それで?ひなたに嫌われでもした?」


初めの質問としてはなかなかに最低だ。


だが、俺が落ち込んでいる様子を見せても変わらない態度は、夏希らしかった。
心配されたら、それはそれで気持ちが悪い。


「……彼女になってもらった」


夏希の暴言が止まる。
見上げると、夏希は開いた口が塞がらないようだった。


と思ったら、急に笑い出した。


「エイプリルフールはとっくに過ぎてるんだけど。それとも、妄想?」
「嘘でも妄想でもねえよ」


疑いの目を向けられるけど、わからないこともない。


「ひなた、天形のこと、吹っ切れたの?」


真剣な表情を見るのは、いつぶりだろう。


そんなことを思う余裕があることに驚く。


「違う。天形から連絡が来て、俺のこと利用して忘れようとしてる」
「……なるほどね」


まだすべてを話していないが、俺が死人のようになっていた理由がわかったのか、夏希はため息交じりに言った。