天形の静かな声に、少しずつ気持ちが落ち着いてくる。
だけど、苛立ちは収まらない。


「私が進学校に通ってるから?天形が、不良だから?周りには言いたいように言わせておけばいい。私は、周りに合わせて自分を作りたくない」


畳み掛けるように言った。


天形はぶつかった机に座る。
目が合うと、天形は泣きそうな顔で微笑んだ。


「俺は君ほど強くないんだ。君が大切だから、俺のせいで君が悪く言われるのが耐えられない。だから……矢野と付き合うって知ったとき、嫌だったけど、安心したんだ。これで君が幸せになれる、傷つかないって」


視線を落とした天形から、目が離せない。
初めて聞く天形の本音は、想像以上の破壊力があった。


「君と再会したとき……篠田と付き合ってると勘違いされたと思って、誤解を解こうとした。そう思って君を引き止めた自分に驚いた。まだ……君が好きなんだって思った」


今度は真剣な表情に、声に、言葉に、心臓の音がうるさくなる。


「未練タラタラな自分がかっこ悪いと思ったけど、ここまで誰かを求めたのは、君が初めてだった。矛盾してるってわかってるけど、君を悲しませたけど、やっぱり諦められなかった」


天形は立ち上がり、数十センチという距離まで近付いてきた。
私の体は動かなくて、ただ天形の顔を見上げる。


「弱くてかっこ悪い俺だけど……絶対、変わるから……もう少し……自分に自信が持てるまで、待ってもらえないかな?」