好きになるには理由があります

「俺はお前が忘れられない。
 お前の顔を見ないと落ち着かないんだ。

 俺が仕事に集中するためにも、お前が必要だ。

 幸い、お前は仕事も切れるようだ。
 お前を側に置いておくことがそんなにいけないことなのか」

 手綱(たずな)かなにのように髪をつかんだまま、陽太は言ってくる。

「いや、仕事が切れるって誰に訊いたんですか」
と言ってみたが、

「そんなの見てればわかる」
と陽太は言う。

 ほんとですか?

 なにかこう、恋の初めなので、瞬間的に目がくもってるわけではなく?
と思ったのだが、陽太は、

「今だって、予備の社史の位置もすぐに答えられたじゃないか。
 滅多に見るもんじゃないから、前、金子に聞いたが、覚えてなかったぞ」
と言ってきた。

「たまたまですよ」

「備品のミスもなく、どれがいいとかアドバイスまでしてくれると評判いいし」

「いやそれ、単に、最初にすごいクレーマーな御局様に当たったからですよ」

 それで、ミスなくこなせるよう気をつけているからだ。