好きになるには理由があります

 


 小さな備品倉庫の扉が閉まった途端、陽太は態度を変えて言ってきた。

「今朝はずいぶんと楽しそうだったな」

「え?」

「朝、杵崎と楽しそうに出勤してきたろう」

 ……どうやったら、あれが楽しそうに見えるんだ。

 深月が返事をせずに角の棚の上にある社史を取ろうとすると、深月の頭の上に陽太の手が伸び、取ってくれた。

 そして、その鼠色の重い社史を手に、
「気づいてはいるだろうが、社史はいらない。
 お前と話したかったんだ」
とまっすぐ深月を見つめて陽太は言ってくる。

 ……貴方、実は暇なんですかっ。

 っていうか、私は貴方のその視線が苦手なんですよっ。

 まっすぐ見つめないでくださいっ。

 犯罪も犯してないのに、ごめんなさいしそうになりますっ、と思いながら、

「ひ、暇なんですか、支社長っ」
とその眼差しから逃げたくて、口に出して、そう言うと、

「暇ではない」
と陽太は言ってきた。