深月が朝から忙しく社内を回って、ようやくデスクに戻ってくると、陽太が総務のカウンターに現れた。
「お、お疲れ様です」
と頭を下げながら、深月は急いでカウンターに行った。
下っ端の深月の席は一番カウンターに近く、誰かが来たら、真っ先に動かないといけないからだ。
陽太は、
「すまないが。
平成元年に作られた社史の予備があったら欲しいんだが」
と深月に言ってくる。
「それでしたら、確か、備品倉庫に。
すぐにお持ちします」
と深月は言ったが、ちょうど席に居た課長はこちらを見ながら青くなっていた。
な、なんで支社長自ら総務に物を取りにっ?
杵崎くんはなにしてるんだねっ、と言った感じでキョロキョロし始める。
それに気づいた陽太が、課長に言った。
「いや、課長。
大丈夫です。
杵崎には別の用事を頼んでいるので。
たまたま今、此処を通りかかったので。
古い社史と、ついでに備品倉庫を見せてもらおうかと思いまして」
「そ、そうなんですか」
とカウンターまでやってきて、課長は言う。



