好きになるには理由があります

 

 今日は船が来ないうちにと海の方をチラ見しながら、必死に自転車を漕ぎ、深月は会社に着いた。

 駐車場の前を通ると誰かが居たので、

「おはようございま……」
と勢いよく挨拶しかけて止まった。

 杵崎(きざき)だったからだ。

「……ございます~」
と小さな声で言って、行き過ぎようとしたが、

「待て」
と言われる。

 仕方ないので、ペダルに足を乗せたまま止まると、杵崎はこちらに来、

「お前、まだ支社長の周りをうろついてるのか」
と言ってくる。

 いや、どっちかと言うと、支社長にうろつかれてるんですけど、と思っていたが。

 杵崎はあの冷たい目線のまま、

「支社長はああ見えてピュアな男だ。
 騙すなよ」
と言ってくる。