好きになるには理由があります

「いや、別にいいですよ」
と言うと、わかった、と言って、陽太は電話を切る。

 なんだったんだ、と思いながら、もう一度、深く布団に潜り込もうとしたとき、スマホが鳴り出した。

「おはよう、俺だが」

 デジャヴだ……。

 私は一定の時間を繰り返しているのだろうかと思ってしまったが、もちろん、違った。

「朝、会社まで乗せてってやろうか。
 船は渋滞ないぞ」

「……私も自転車なので、ありません」

 そして、会社まで行くより、此処から船着き場に行く方が遠い気がするのは気のせいですか、と思っていると、陽太は、

「心配するな。
 そっちに車を回すから」
と言ってくる。

「け、結構です。
 何度も言うようですが。

 貴方と出勤しようものなら、私、女子社員のみなさんにボコボコにされてしまいます」
と言って、深月は電話を切った。

 また陽太がなにか言ってこないうちに出よう、と寒さをこらえ、いつもより早くベッドから飛び出す。