陽太は船を近くの漁港ではなく、少し離れたマリーナにとめていた。
そこまでタクシーで移動する。
「あんまり近いと誰かが邪魔しに乗り込んでくるかもしれないからな」
と陽太は言う。
「忍者は空気を読むから来ないだろうが」
あの人、イカ焼きをお土産に何処かに帰ってっちゃいましたしね……。
もう遅い時間なので、陸地の灯りは少なくなっていた。
港に停泊したままの船のデッキで風に吹かれていると、
「呑むか?」
と陽太がグラスを持ってきた。
「もう結構呑んでますよ。
っていうか、最近、お酒呑むの、身構えちゃうんですよね。
酒の不始末さえなければ、こんなことになってないわけですしね」
とグラスを受け取りながら言うと、
「じゃあ、呑んだくれてよかったって話だろ。
そういえば、あのとき、振る舞われたのも神様の酒だったし。
きっと、お前の神様が俺を選んだんだよ」
と陽太は都合のいい解釈をする。