清白(すずしろ)さんところの会社と取引があって、話が早かったんだ」

 そう陽太が言う。

 清白というのが、その可愛らしい夫婦の名前のようだった。

「そうなんですか。
 わざわざありがとうございます」

と深月は彼女たちとぽすと高岡と陽太に頭を下げた。

「ところで、忍者の人は何処ですか?」

「え? 忍者?」

と彼女、清白鈴(すずしろ すず)がきょとんとして、周囲を見回す。

「いや、忍者じゃないんですけど」

と高岡が苦笑いして、今日は少ししか出ていない屋台の方を指差す。

 さっき、彼女らの側に居た長身の若い男がスーツ姿でイカ焼きを買っている。

「私の母方の親戚なんですけど。
 忍者だったのは先祖で、彼は普通に要人警護の仕事をしてまして」

 ……要人警護の仕事って普通の人しないような、と思いながら聞いていると高岡は笑い、言う。

「今は、普通にお屋敷で執事のようなことをして働いているようです」

「高倉です」

 わ、びっくりしたっ、と深月は振り返る。

 今、イカ焼きを買っていたはずなのに、いきなり背後で声がしたからだ。