好きになるには理由があります

 周囲を回したが、海しかない。

 お、泳げるか……?
と波打つ水面を見つめ、今にも飛び込みそうな深月に、陽太は、

「逃げるな」
と言ってくる。

「たいしたことはしない。
 約束したからな」

 たいしたことではないことはする気かっ、
とその場にあったフォークをつかみそうになったが、その前に抱き上げられた。

 間近に深月の顔を見た陽太は怯えた深月がおかしいらしく、ちょって笑って、キスしてくる。

「あっ、あのあのあのっ、人が見てますっ」

「……何処に人が居る?」

 真っ青な空の下、抱き上げられているので恥ずかしいが。

 そういえば、陸地から離れているうえに漁船も他の船も居ない。

「じゅ、巡視艇とか」

「別に悪いことはしてないんだから、見られてもいいじゃないか」

「潜水艦とか」

「潜水艦なら、上見えないだろ?」
と言ったあとで、陽太は、

「そんなに気になるのなら、中に入ろう」
と深月を抱いたまま中に入ろうとする。

 いやいやいやっ。
 それもちょっとっ、と開いた扉のところで壁をつかみ、踏ん張ってみたが、無理だった。