結局、みんなで珈琲を飲んで、少し話したあと、陽太と深月は一緒に家を出た。
船が着いている漁港までそう遠くないので、二人で歩くことにする。
天気もいいし、もうかなり暖かくなってきたしな、と深月は空を見上げた。
「よかったよ、逃げ出さないで」
といきなり陽太が言い出すので、仕事かなにかの深刻な話かと思ったら、深月の父親と逃げ出さずに珈琲を飲んでよかったという話だった。
「おかげでお前と出掛けられることになったしな」
と陽太はご機嫌だ。
「今日は二人で何処かに行くのか?」
となんとなく父親が言った言葉に便乗し、なにも決めてなかったのに、陽太が、
「はいっ」
と勢いよく言ったせいで、今、此処でこうしているわけだ。
いや、確かに用事もなかったし、いいんですけどね、と深月は、ぽかぽかの日差しに照らされた住宅街の道を歩く。



