好きになるには理由があります

「珈琲淹れたから、飲んでいきなさいよー」
と条子がキッチンから叫び返してくるのが聞こえた。

「いえ、もう戻ります。
 ありがとうございました」
と言う陽太に条子が言う。

「主人も起きたから、一緒に珈琲でも――」

「いえ、もう戻ります。
 ありがとうございましたっ」

 そう素早く繰り返した陽太は、そのまま帰ろうとする。

 ……怖いのですか、お父さんが、と深月は苦笑いした。