好きになるには理由があります

 い、いや、髪はぐちゃぐちゃ。

 目は、はれぼったくて。

 下手すりゃ、むくんで二重顎になってますけど、寝起きの私、と深月は思っていたが。

 陽太は、
「今なら、なにかできそうな気がするな」
と笑い、深月の側に手をつくと、身を乗り出してきた。

 ほんのちょっとだけ、陽太の唇が触れてくる。

 わー……。

 いやいや、ちょっとっ。

 ちょっとどうしたらっ!

 杵崎にされたときより、もっと軽いキスだったのに、激しく動揺してしまう。

 だが、深月が得体の知れない行動を取るより先に、陽太は立ち上がった。

「帰るよ。
 このまま此処に居たら、もっといろいろしてしまいそうだから」
と言い、部屋の戸を開け、

「条子さんー。
 寝起きの深月が見られたから、帰りますー」
と陽太は叫ぶ。

 いや、貴方、うちの親になんと言って此処に残ってたんですか、と深月は思う。