好きになるには理由があります




 よく寝た……と深月が目を覚ますと、朝の光の中、陽太が深月の顔を覗き込むようにして立っていた。

 ひっ、と深月は布団を抱きかかえるようにして飛び起きる。

「……よかった」
と陽太は深月の顔を見たまま言う。

「お前が俺たちが朝食を食べても、杵崎が帰っても、俺を見張っていた清春が仕事で仕方なく出て行っても、まだ寝ている怠け者で」

 何故、私は起きぬけから罵られているのだろうか……と思っていると、陽太は深月のベッドに腰掛けて言ってきた。

「見たかったんだ。
 寝くたれてどうしようもない感じのお前を」

 ……何故ですか、と思っていたが、陽太は、
「だって、そういうのって、気を許した相手しか見られない感じがしていいじゃないか」
と言う。

 確かに、船で目覚めたときより、自室なので、よりひどいありさまになっている気はするが……と深月は思っていたが。

 陽太は、うん、と深月を見つめ、嬉しそうに笑ったあとで、
「なんか朝から得した気分だ」
と言う。