好きになるには理由があります

 


「いや、前から言われてはいたんだけどな。
 奥さんが実家に帰ったら、自分もついていくから、神楽には出られないかもって」
と陽太が神楽の練習に行くと、則雄が杵崎が参加することになった理由を教えてくれた。

 吉田さんという若い人が、初産の奥さんが早産になりそうなので、もしかしたら、出られないかもと以前から言っていたらしいのだ。

「ま、もともと聞いてたから、あんまり出番ない役を振ってたんだよ。
 だから、誰かが他の役と兼ねてもいいかって言ってたんだけど。

 ちょうどやる気のある(ひで)が居たから。

 それになんか盛り上がりそうだし」
と陽太を見て笑う。

 ……面白がってるな、その顔を見て陽太は思った。

 その日、杵崎は自分たちより少し早めに入って、稽古をつけてもらっていた。

「そうそう。
 上手いじゃないか!」
と早速、則雄に褒められている。

 ずっと稽古を見ていたので、ある程度動きが頭に入っていたようだ。