好きになるには理由があります

 家っ。

 家っ。

 ……家ーっ!
とまるで長い旅に出ていた人のように、自宅を追い求め、心の中で絶叫したとき、ようやく家の灯りが見えてきた。

 ホッとする。

 陽太も慌てて手を離したように見えた。

 何故だ、支社長。

 自分から握っておいて。

 私のことがお嫌いですか?
と思い、その顔を覗き見たが、玄関の灯りに見える陽太の顔は少し赤らんでいるように見えた。

「おっ、おやすみ。
 疲れてるだろうから、早く寝ろよ」
と早口に言った陽太は急いで自転車を自転車置き場に止め、深月を玄関に押し込むと、

「じゃっ」
と言って帰っていった。

 勝手に閉められた玄関扉の内側で、深月はその扉を見たまま、立ち尽くしていた。

 なに動揺してるんですか。

 動揺したいのはこっちの方ですよ。

 この間まで平気で、私を襲おうとしたり、膝に乗せたりしていたのに。

 ……いや、平気ではなかったか、と勝手に膝に乗せておいて、赤くなって俯いていた陽太を思い出す。

 でも……

 そんな支社長が好きかも、とうっかり思ってしまい、

 いや、好きとかっ。

 そんなんじゃありませんけどっ、と陽太が聞いているわけでもないのに、心の中で弁解する。