好きになるには理由があります

 


 ひい、と深月は固まっていた。

 いきなり陽太が手を握ってきたからだ。

 だが、耐えねば、と思う。

 手を握られたくらいで動揺していたら、支社長に感づかれてしまうかもしれないと思ったからだ。

 あの晩、なにもなかったことを。

 たぶん、此処は、大人らしい、余裕の微笑みを見せるべきところだ。

 大人らしい……

 余裕の微笑みって、どんなんだーっ!?
と深月は心の中で絶叫する。

 なんとかぎこちない微笑みを押し上げながらも、深月は思っていた。

 ああっ。
 考えすぎて、目眩がしてきたっ、と。

 このままだと、おかしな言動をしてしまいそうだ!

 家にっ。

 早く家に帰りつかなければ、窒息死してしまうっ、と深月は焦る。

 息はちゃんとしているはずなのに、妙に息苦しく。

 いつもなら頬に当たる冷たい夜風が気になるのに、今は、熱くて大きな陽太の手にばかり神経が行ってしまう。