ちょっと落ち着こう。
深月があの晩のことを思い出そうとしているなんて、きっと気のせいだ。
そう自らに言い聞かせながら、陽太は操舵室へと向かった。
高岡は陽太より十くらい年上で、いつも笑っている、感じのいい男だ。
高岡は車でも船でも飛行機でもなんでも運転してくれるので、本当に助かっている。
口も堅いしな、と思いながら、高岡の後ろに立つと、高岡は海原を見たまま、まるでこちらの思考を読んだかのように、笑って言ってきた。
「私、飛び降りましょうか?」
いっ、いえいえ、と慌てて言うと、高岡は前を見たまま言ってくる。
「あ、そうだ。
わかりそうですよ、例の件」
「本当ですか?」
と陽太は高岡の座る椅子に手をかけ、身を乗り出した。



