好きになるには理由があります

「雑貨屋とかネットショップにあるよ。
 っていうか、なんで私に訊くの?」

「だって、深月、いつも着てんじゃん」

「いや……、あれ、コスプレじゃないから」

 たまに謎のカメラ小僧みたいな人に物陰から写真を撮られたりすると、コスプレのような気もしてきてしまうが。

 そんなしょうもない話をして、也美とは別れた。

 この話題を持ち帰っても場はなごみそうにないな……。

 それでというわけではないが、まだ戻る気になれなかったので、深月は少し離れた棟とをつなぐ、長い長い渡り廊下を歩いた。

 窓の外を見ると、工場の向こうに、港と船が見える。

 隅の方にちょこんと陽太のクルーザーがあった。

 かなり大きなクルーザーなのだが、会社の船と比べたら、当たり前だが、ずいぶんと小さい。

 その船をぼんやり眺めがら深月は思っていた。

 思い出したいな、と。

 あの晩の支社長とのことを思い出したいな、と。

 何故、今、そんなことを思うのかわからないが。