好きになるには理由があります

「ちょ、ちょっと出てきますね」

 そう言い、さっき戻ってきたばかりなのに立ち上がる。

 二人で此処に居るのがちょっと気詰まりになってしまったからだ。

 深月は適当にその辺の封書をつかみ、さも重要なものであるかのように持って出た。

 だが、杵崎は秘書室の中の物のほとんどを把握しているので、

 いや、お前、それは総務から回ってきた事務用品の春の特売キャンペーンのお知らせだろうが、
と思っていたとは思うのだが。

 此処から逃げたい深月の気持ちを察してか、なにも言ってはこなかった。