「大丈夫か?
悪い奴にさらわれなかったか?」
と翌朝、おばさんの祝いから帰ってきたという陽太に深月は訊かれた。
「さらわれていたら、此処にいません」
と朝日の眩しい支社長室で深月が言うと、
「そういう意味じゃない。
誰かにお持ち帰りされなかったかと訊いてるんだ」
と陽太は言ってくる。
「いや……帰り着くまで電話かけ続けてたのでおわかりでしょうに」
だが、そう言いながら、深月は思っていた。
電話なんて幾らかけても役に立たないもんなんだな、と。
陽太の電話が杵崎のキスから守ってくれることはなかったし。
陽太がそれを知ることもできない。
ていうか、杵崎さん、もう全然ケロッとしてるから、記憶にないんじゃなかろうか、と思いながら、深月は、
「失礼しました」
と支社長室を出た。



