好きになるには理由があります

 


 深月はスマホを手に階段の暗がりに立ち、父親と話していた。

 実の父ではない。

 今の父だが、昔から可愛がってくれていたので、父親になっても、あまり違和感はない。

「そうそう。
 うん。
 大丈夫。

 明日もお稽古あるし、早めに帰るから」
と話していると、店内の騒がしい声が深月の居る踊り場まで響いた。

 誰かが扉を開けたようだ。

 チラと見ると、杵崎がこちらに向かい、上がってくるところだった。

「まだ話してるのか」
とこちらを見上げ、杵崎は言ってくる。

「はい」
と頷くと、父、良彦(よしひこ)が、

「誰か来たのか?」
と訊いてくる。

「はい、職場の方が」

「そうか。
 じゃあ、気をつけて早く帰りなさい。

 タクシーでもいいから。

 今日は私ももう呑んでしまったからな」
と言うので、深月は、

「あっ、そうなんだ?」
と言いながら、目の前に立った杵崎を見上げた。

「うん。
 条子がお前たちが居ないからだろうな。

 地区役員の打ち合わせを口実に、近所のおばちゃんたちとファミレスに行ったんだ。

 それで、私も(まさる)とおじいちゃんと焼き鳥屋に行ったんだよ」

「お父さんも行ったの?」

 勝は深月の実の父だ。