好きになるには理由があります

 


 杵崎は深月に導かれ、隅の方の席に行った。

 広い店内を貸し切っているので、あちこち別れて盛り上がっているのだが。

 その一角は比較的静かだった。

「喜一さんのお知り合いらしいです」

 深月はその女性を大きな神社の巫女さんだ、と紹介してくれた。

 彼女は色白丸顔で、当たり前だが、巫女装束ではなく。

 いまどきの普通の服を着ていた。

 ただ長いストレートの黒髪だけが、ああ、巫女さんなのかなあ、という感じだ。

 それと、やっぱり、ちょっと他の子よりは落ち着いた印象だった。

「ではでは、これで」
と深月は杵崎をその席に置いて、酔っているとは思えない足取りで、スタスタ行ってしまう。

 少しその子と話した。

 おかしいな、と杵崎は思う。

 大きな神社に勤めている本物の巫女さんなんだが。

 ちゃんとお茶やお花もたしなんで。

 顔も可愛いし……。

 なのに、なんでだろう、ときめかない。

 そんなことを考えながら、杵崎はぬるくなった酒をいつまでも呑んでいた。

 酒があまり進まなかったからだ。