好きになるには理由があります

「えーっ?
 また支社長ーっ?」

「もうっ、支社長うるさいっ。
 かわりなさいっ、私が文句言ってやるからっ」

 取らずに切ってやれーっ、と酔った弾みか、由紀たちが口々に恐ろしいことを叫んでいる。

 それにしても、この二人、もう関係があるのかと思っていたが、違うのだろうか、と杵崎は思う。

 陽太のこの余裕のなさ。

 まだ一宮になにもしてないに違いない。

 ……まあ、諦める俺には関係のないことなんだが、と思うその手をぎゅっと深月が握ってきた。

「はい、杵崎さん。
 巫女さんはこちらですー」

 純さん経由、巫女さん終点です~と言いながら、騒がしい人波の中、自分を引っ張って行こうとする。

「……お前、そうは見えないが、酔ってるな」

「酔ってないです~。
 酔いそうになったら、支社長の電話で酔いを覚まされてます~。

 でも、なんだかわからないですけど。

 みんながドボドボお酒ついで来るんですよ~」
と言うので、

「金子たちか?」
と可愛らしい人買いのような深月に連れて行かれながら言うと、

「あっちの人たちです~」
と深月は、気弱ではない自分の友人たちを指差した。

「……よし、俺が後でシメといてやる」
とそっちを見ながら友人たちに聞こえるように言うと、みんな苦笑いして、よそを向いていた。