杵崎が少し遅れてコンパに向かっていると、
「英」
と繁華街の道で誰かが自分を呼んだ。
振り向くと、たまに神楽の手伝いに行ったときに出会う喜一が自転車で後ろからやってくるところだった。
「おっ、そうか。
今日はコンパか」
と言う。
「喜一さんは行かないんですか?」
と訊くと、
「俺は万理による謎の同窓会に行くところだ」
と喜一は苦笑いしたあとで、
「っていうか、俺、嫁も子どもも居るし」
と言ってくる。
年は同じくらいなのだが。
何故か喜一に対して敬語になってしまうのは、喜一が、自分が子どものとき、こんな先生が担任だったらよかったな、と思う感じの教員だからかもしれない。
「懐かしいなあ、コンパとか。
楽しくもあるけど、疲れもするよな。
もう行けない寂しさもあるけど。
もうああいうとこ行かなくていいんだって、ホッとしたりもする」
と喜一は言った。



