好きになるには理由があります




 秘書室には杵崎が居た。

 ノートパソコンの画面を見たまま、
「長いぞ。
 ちょっと報告してくるだけなのに」
と文句をつけてくる。

「はあ、コンパのお知らせもしたので」
と言いながら、深月は自分のデスクに腰掛けた。

 ふう、と小さな観葉植物の側に置いていた冷えた珈琲を一口飲む。

「……支社長も来るのか?」
と画面を見たまま、杵崎が訊いてきた。

「支社長は母方のおばさんの誕生祝いにかけつけないと、とか言ってましたよ」
と言うと、何故か杵崎はホッとしたようだった。

「ああ、さゆみさんかな。
 何度か見たことがある」

 杵崎は陽太の父方の親戚なので、然程、面識はないようだった。

「美人で強烈なおばさんだった」
と言うので、やはり、一族で美形なのか、と思いながら、ふと訊いてみた。

「そういえば、コンパ、私は職場から、みんなとタクシーで行こうかと思ってるんですが。
 杵崎さんは、あの自転車で行くんですか?」

「行くわけないだろうが……」

 まあ、そうか。
 大人気にはなるだろうが、違った意味でだ。

 初対面であの自転車で現れたら、女の子、ちょっと引くかもなーと思っていると、杵崎はパソコンのキーを叩きながら言ってくる。