好きになるには理由があります

 本気で好きだと意識し始めてからは、覚悟を決めないと、手もつかめなくなっている。

 今朝なんか、書類をもらうときに深月の手が触れただけで、書類を取り落としそうになってしまった。

 そんなことを思い出している陽太の前で、ないない、と則雄は笑って手を振り、言ってくる。

「陽太は深月になにもしてないさ」

 ノリさんっ、ありがたいんですが、今は言わないでっ、と陽太は祈っていた。

 深月に最初の晩もなにもなかったことを感づかれてしまいそうな気がしたからだ。

 鬼神の如く怒っている清春が鎮まってくれるのはいいが、深月が、そういえば、という風に小首を傾げているのが気になるっ。

「なにかあるにしては、ぎこちなさすぎだよ、この二人~」
と笑う則雄に、

 ノリさんっ、助け舟ありがたいんですがっ。
 逆に、突き落とされている感じがしますっ!
と陽太は思っていた。