「お前は料理が苦手なようだが。
一人暮らしの経験はないのか」
潮風に吹かれながらの心地よい朝食の席で、深月は唐突に陽太にそう言われた。
底が少し焦げているが、白身が陶器のようにつるんとして美しい目玉焼きを食べながら、うっ、とつまる。
確かに。
今日も、皿を並べたり、お湯を沸かしたり、パンを焼いたりしかしていない。
「……ないですね。
大学も家から通っていたので。
寂しくないし、家事もしてもらえるし、楽でよかったんですが。
でもちょっと、一人暮らししてみたいかなって思う時期は、やっぱりありました」
と深月が言うと、陽太は何故か警戒したような顔で、ほほう、と言う。
「好きな男でもできたからとか?」
そう窺うようにこちらを見ながら陽太は訊いてくるが。
いや、なんで一人暮らししたいで、好きな男ができたになるんだ?
と深月は思っていた。
恋愛経験もなければ、男心もわからないので、陽太の警戒の意味がわからなかったのだ。



