好きになるには理由があります

 


 向こうから来る女が楽というのはわかる気がする。

 他のことは深月がやってくれているので、卵を美しく焼くことに専念しながらも、陽太は頭の片隅でそんなことを考えていた。

 今、猛烈に、深月の方からぐいぐい来て欲しい。

 昔は、男の方から強引に迫るべきだと思っていたが。

 そんなこと軽く考えていたのは、本気で誰かを好きになったことがなかった証拠だと今ならわかる。

 強引に出て、深月に泣かれでもしたらどうしようと思うと、つい、ビクビクしてしまう。

 なにかきっかけが欲しいなと思っていた。

 少しは自信を持って、深月に迫れるきっかけが――。

 気の迷いでもいいから、
「支社長っ、好きですっ」
とかなんとか言わないもんだろうか、とデッキでテーブルに白い皿を並べている深月を見つめる。